2018年04月10日

2.心技一体

技術の原点は心になければならない。

例えば、ピアノの演奏で考えてみよう。
一つの音に気持ちを込める、一音入魂。それは正しい。
けれど、感情のままに鍵盤に指を押し付けてしまっては、ピアノは悲鳴をあげるだけだ。
弱音に心を込めようとする時、ただ鍵盤にそっと触れるだけでは、か細い貧弱な音になるだけだ。
一方で、どんなに優れた技術を身に付けたとしても、その人の心の内に豊かな音楽がなければ、技術は宝の持ち腐れとなってしまう。

良い技術を学ぶとは、正しい心の込め方を学ぶ事。
心(想い)なくして技術の鍛練は成り立たない。私たちは、ハノンの練習とJ.S.バッハの作品の演奏が決して異なる行為でない事を、理解しなければならないと思う。何故ならピアノの前に座った以上、いつなんどきも、単なる音ではなく音楽を奏でるべきなのだから。

恩師である故ヴェーラ・ゴルノスターエヴァ先生が、いつだったかおっしゃられた事を思い出す。
「ギレリスは、ハ長調の音階を弾いても音楽だった。」
それこそが本物の技術、理想的な心技一体の姿なのだと思う。

*エミール・ギレリス(1916〜1985)
旧ソヴィエト連邦(現ウクライナ)、オデッサ生まれ。20世紀を代表する巨匠ピアニストの1人。
posted by tetsumichi at 07:00| 音楽について

2018年04月05日

1.音楽に携わるならば……。

音楽に対する愛情があれば
作曲家が書いた全ての音を自ずから
大切にせずにはいられないだろう。

音楽に対する愛情があれば
ハーモニーの変化に無関心ではいられず
それを何とか響きで表現したいと熱望するだろう。

音楽に対する愛情があれば
優れた技術を身に付ける為にかかる長い長い年月、労力、忍耐……
それら全てを苦と思わず受け入れられるだろう。

音楽に対する愛情があれば
興味も情熱も永遠に尽きる事はないだろう。

音楽に対する愛情があれば
他人からどの様な評価を受けようと迷う事なく
自分が到達せんと願う境地に向かって歩み続けられるだろう。

音楽に対する献身があれば
音楽は必ずやその人の心を豊かにしてくれるだろう。

音楽に対する献身があれば
その人は決して思い上がる事はないだろう。

音楽に対する愛情と献身があれば……
その人は感謝を忘れる事はないだろう。

posted by tetsumichi at 07:00| 音楽について