響きを聴く、と言う行為を想像してみて下さい。消えゆく響きに耳を澄ます事は何かが自分から去って行くような感覚であり、まさに「はかなさ」の感情の体験に他なりません。それなのに……音を鳴らす、ピアノに関して言及するならば、打鍵に意識を支配されてしまっている人が何と多い事でしょうか!!
思い出されるのは、私が10代だった時、あるマスタークラスで故ロストロポーヴィチ先生がおっしゃられた言葉です ── 「きこえるかきこえないかの弱音で何かを聴き手に伝えられてこそ、本物の音楽家なのです。」
どうぞ弱音に、自身から去って行く響きに、じっくり耳を傾けてみて下さい。
知性で音楽を理解する事はできません。
深い感情で音楽に触れ得た時、音楽は初めて、私たちに沢山の事を教えてくれるのですから。
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