2021年06月25日

【演奏音源】2014年3月22日の演奏会より。(A.マルチェッロ=J.S.バッハ、J.ブラームスの作品)

【ポリフォニー音楽の神髄 Vol.2 〜知性と情緒の融合〜 吉永哲道ピアノリサイタル】より

J.S.バッハ:
アレッサンドロ・マルチェッロのオーボエ協奏曲によるチェンバロ協奏曲BWV974より アダージョ
J.ブラームス:
3つの間奏曲 op.117

吉永哲道(ピアノ)
Tetsumichi YOSHINAGA, piano

2014年3月22日、宗次ホールでの収録


《演奏会当日のプログラムノートより》

1892年に心の友とも言うべき親しい間柄であったエリザベート・フォン・ヘルツォーゲンベルク夫人(作品79の2つのラプソディーは彼女に献呈されている)と姉のエリーゼが相次いでこの世を去り、50代半ばを迎えていたブラームスはこの頃から死への意識や孤独感をますます募らせていったと伝えられている。
晩年の傑作である作品116から119に至る4つのピアノ小曲集は、その様な心境の中で生み出された。とりわけ、ブラームス自身が「わが苦悩の子守歌」と呼んだ作品117の3つの間奏曲は、ブラームスの心奥の孤独が熟達した書法によって、染み入るように聴き手の心に迫る作品となっている。


安らかに眠れ、我が子よ、安らかに美しく眠れ!

おまえが泣く姿を見るのが私にはたまらない。


冒頭にヘルダー編「諸民族の声」からスコットランドの詩「不幸な母親の子守歌」の二行が銘句として引用された第1曲は、歌うというよりも朴訥と語るような調子で始まる。何かを愛おしく思うが故に味わう苦しみ(ブラームスにとってそれは、恐らく過ぎ去った時間であろう)…この小品では、そういった心理が音楽化されているのではないだろうか。またオクターヴの内声としてメロディーラインを配置するというポリフォニックな書法も、いかにもブラームスらしい。第2曲は、分散和音の動きの上で嘆きを表す二度音程進行を含む旋律が歌われ、ブラームス特有の仄暗い情熱に満ちている。調性や和声の精妙な移ろいは、まさに、作曲家の揺れる心情を代弁しているようだ。ユニゾンで始まる第3曲は陰欝な苦悩の独白である。中間部で少し明るさが垣間見えるものの、再現部ではテーマが一層焦燥感を帯びて現れ、最後は深い嘆息とともに終わってゆく。
かように、この曲集は苦悩や憂鬱を色濃くまとっているが、そうでありながらも、決して絶望には至らず、時に慈しみや安らぎさえも感じさせるのは、人生を諦観したブラームスの境地が反映されているからであろう。孤独が人間の本質である事をブラームスは理解し、ともに生きた。だからこそ、彼の、特に晩年の作品には、人間に対する悲しみを帯びた慈愛の眼差しがあるように私は感じるのである。

吉永哲道








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2021年06月15日

36.前腕屈筋群の役割。

テクニックのお話です。

倍音をコントロールする技術。

タッチに関する現時点での私見ですが、前腕の屈筋群をいかに使うかにかかっているように思います。
浅指屈筋、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋……具体的にどの筋肉がどれくらいの割合で働いているのかは正確には分かりませんが、前腕の内側、特に肘に近い部分を触りながら響きを確かめると、屈筋群がしっかり働いている状態と緩んでしまっているそれとでは、楽器の響き方が明らかに変わります。
日本で一般に言われている脱力は、恐らく結果的に前腕を”虚脱(あるいはそれに近い)状態にしようとしてしまっている”場合が多いのではないでしょうか。前腕から意図的に力を抜いて(抜こうとして)しまっては、そもそも指を効率よく動かす事すら不可能なはずです。

以前整形外科の医師の方に伺いました。「指を動かす筋肉はほとんど前腕の中にあり、更に指先の細やかな動きになると虫様筋の働きが重要になるんですよ。」

ピアノと言う楽器を倍音豊かな、歌う響きで奏でるためには、前腕の使い方を考える事が重要になると思います。いわゆる“指先を回す”発想を捨て、前腕の屈筋群を意識して指を動かす事で、得られる響きが変わっていくはずです。



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2021年06月13日

【演奏会情報】黒岩悠×吉永哲道 西欧からロシアへ 〜名曲でたどる伝統と栄華〜

チャイコフスキーとラフマニノフによって隆盛を極めたとも言える、ロシア・ロマン派の音楽。西欧の伝統とロシアの文化・精神が融合するに至る道程を想像しながら、今回のプログラムを構成しました。
是非お聴きいただければ嬉しく思います。
吉永哲道


西欧からロシアへ 〜名曲でたどる伝統と栄華〜
黒岩悠×吉永哲道 ピアノ・ソロ&デュオ

〈日時〉
2021年7月11日(日) 13:30開演(13:00開場)
〈会場〉
宗次ホール
〈出演〉
黒岩悠(ピアノ)
吉永哲道(ピアノ)

〈曲目〉
[吉永ソロ]
P.チャイコフスキー:
18の小品 op.72より 第5番「瞑想曲」
F.リスト:
《詩的で宗教的な調べ》より 第7番「葬送」
[黒岩ソロ]
M.グリンカ:
ノクターン「別れ」
J.S.バッハ(F.ブゾーニ編):
シャコンヌ
[2台ピアノ]
P.チャイコフスキー(N.エコノム編):
「くるみ割り人形」組曲より
小序曲
行進曲
金平糖の踊り
ロシアの踊り
葦笛の踊り
花のワルツ
S.ラフマニノフ:
2台ピアノのための組曲第2番 op.17より
ロマンス
タランテッラ

〈入場料〉
一般自由席 2,000円
〈主催〉
宗次ホール
〈チケットお問い合わせ〉
宗次ホールチケットセンター Tel : 052-265-1718
チケットぴあ Tel:0570-02-9999[Pコード:197-201]


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